ご挨拶
本財団は日本の近世美術を中心とした研究を通じて、その優れた文化と歴史的背景を見つめ直すことを目的として設立いたしました。先の大戦からすでに七十年以上が経過し、混沌とした世界情勢の中に放り込まれているにもかかわらず、いまだ日本人としての誇りを取り戻せていない我が国の情勢に鑑み、その心の糧となり得る日本美術の意義を子々孫々に伝えていく必要があると思い至ったからであります。
主な活動として、その成果を世間に公表すべく、今後十年にわたって刊行し続けられるような学術雑誌を創刊いたしました。まず、タイトルを「日本近世美術研究」としたのは、江戸時代の古美術品を縦割りでみるだけでなく、絵画とも密接な関係がある染織や鏡、刀装具などをも横断的に取り上げるような誌面作りを考えたからです。現在の日本美術史研究のメインストリームである仏像や絵画のみにとらわれず、なるべく様々な分野における意欲的な若手研究者に場を提供しようとの試みとしてご理解いただければと思います。また、「抜刷り」は作らず、国会図書館をはじめとする各地の図書館や美術館、博物館に寄贈するのはもとより、関係のある研究者に1冊ごとお送りすることにより、執筆者全員の意欲をダイレクトにお届けできればと思います。
やがて本誌の価値が認められるようになることを希望いたしますが、そのためにも皆様からの温かいご指導、ご鞭撻を賜りますこと、 切にお願い申し上げる次第でございます。
北島古美術研究所